大阪高等裁判所 平成3年(行コ)51号 判決
事実及び理由
第三 当裁判所の判断
二 差止めの対象(争点1)
1 地方自治法二四二条の二第一項一号の差止めの対象
控訴人らは、本件新規則〔編注、廃棄物の減量推進及び適正処理並びに生活環境の清潔保持に関する規則〕による減免措置は、地方自治法二四二条の二第一項一号の規定による差止めの対象となると主張する。
ところで、地方自治法二四二条の二第一項一号の規定による住民訴訟の制度は、普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法二四二条一項所定の財務会計上の違法な行為を予防するため、一定の要件の下に、住民に対し当該行為の全部又は一部の事前の差止めを裁判所に請求する権能を与え、もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものである(最判平五・九・七民集四七巻七号四七五五頁)。
右規定による差止請求は、本件に関していえば、大阪市長である被控訴人の行う財務会計上の違法な行為について、その差止めを求めるものである。
そして、差止めの対象は、その一つ一つの行為を他の行為と区別して特定し認識することができるように個別、具体的に摘示することまでが常に必要とされるものではない。もとより、この場合にも差止請求の対象となる行為とそうでない行為とが識別できる程度に特定されていることが必要であることはいうまでもない。しかし、事前の差止請求にあっては、当該行為の適否の判断のほか、さらに、当該行為により普通地方公共団体に回復困難な損害を生ずるおそれがあるか否かの点に対する判断が必要となる。このことから、これらの点について判断することが可能な程度に、その対象となる行為の範囲等が特定されていることが必要であり、かつこれをもって足りる(前掲最判参照)。したがって、それ以上の厳密な特定は不要である。そうであってみれば、監査請求後法令の改廃があり、当該行為の根拠法令を異にするものであっても、当該行為の性質、目的等に照らして、新旧規定下の行為に実質的な変更がなく、これらを一体とみてその違法又は不当性を判断するのを相当とするときは、旧規定下の行為の監査請求により新旧規定下の行為全体につき監査請求前置の要件に欠けるところはない(前掲最判平五・九・七、最判平二・六・五民集四四巻四号七一九頁参照)。
本件では、控訴人らが住民監査請求を行った当時、既に被控訴人による本件旧条例〔編注、大阪市廃棄物の処理及び清掃に関する条例〕に基づく減免措置が行われており、控訴人らは、今後の右減免措置を差し止めることを求めて、住民監査請求をし、その後本訴を提起した。
控訴人らは、右当時における被控訴人の減免措置の法的根拠規定を前提として、本件旧条例に基づく右減免措置の違法を主張したものであるが、住民監査請求及び本訴の請求の趣旨には右減免措置の法的根拠を限定していない。
したがって、控訴人らが、差止めの対象とする「本件手数料の減免措置」とは、被控訴人による本件手数料の定めに関し、許可業者に限って何らかの形態で特別に減免されている措置を包括的に表わしていたものとみることもできる。
そして、地方自治法二四二条の二第一項一号の規定による住民訴訟の趣旨からして、控訴人らが、差止めの対象となる被控訴人の財務会計上の違法な行為を右のように包括的にとらえて、その差止めを求めることも、前示の基準に照らし、その対象の特定性の観点からみて、許されるというべきである。
また、後示のとおり、本件新規則による減免措置のうち附則三項によるものは、本件旧条例に基づく従前の減免措置を直ちに廃止することは相当でないとして、段階的にこれを廃止することにし、その経過措置としてなされているものである。そうであるとすると、従前の減免措置を受けてその一部を承継したものといえる。
したがって、本件手数料の定めに関する法的根拠は、右住民監査請求以降に変遷しているが、これによって、本件請求の包括的な対象が実質的に変更されたものでなく、これを一体とみてその違法性又は不当性を判断するのを相当とする。そうであれば、本件請求の包括的な対象の全部または一部が、住民監査請求前置の関係で不適法となるものではないと解される。
2 控訴人らの主張の検討
そこで、次に本件新規則による減免措置そのものが、本件請求の対象となるのかどうかを検討する。
なるほど、被控訴人主張のように、規則の条項自体を住民訴訟の対象とすることはできないと考えられる。それは右条項のみではそれ自体住民訴訟の対象となるべき具体的な財務会計上の行為といえないからである。しかし、規則の条項が具体的な財務会計上の事項を定めている場合において、これに基づき行う具体的な措置、本件では手数料の減免措置一般の差止め請求は、住民訴訟の対象となり得ると考える。その理由は次のとおりである。
(一) 規則について
地方自治法一五条一項は、普通地方公共団体の長の規則制定権を定めている。規則は、条例のように憲法に直接規定されているものではないが、条例同様、普通地方公共団体の定立する法規範である。また、規則は、条例と並列的に住民の権利義務に関する定めをするものと、普通地方公共団体の内部的な規範を定めるもののほかに、条例の委任を受け又は条例を執行するためにも定めることができる。
(二) 本件新規則の内容
前示のとおり、廃棄物処理法は、六条の二第六項で、市町村は、当該市町村が行う一般廃棄物の収集、運搬及び処分に関し、条例で定めるところにより、手数料を徴収することができると定めている。
右条項に基づいて制定されたのが、本件新条例〔編注、廃棄物の減量推進及び適正処理並びに生活環境の清潔保持に関する条例〕三〇条一項であり、同条項は次のとおり定めている。
三〇条一項 本市が一般廃棄物の収集、運搬又は処分を行う際には、次の表の範囲内で市長が定める手数料を徴収する。
表のうち、取り扱い区分が、「市長が指定する処理施設へ搬入されたものの処分」の場合には、単位二〇キログラムまでごとに」、手数料「五八円」。
そして、被控訴人は、右条例に基づいて、本件新規則一二条において、次のとおり規定している。
一二条 条例三〇条一項の市長が定める手数料は、次表のとおりである。
表のうち、取り扱い区分が、「市長が指定する処理施設へ搬入されたものの処分」で「一般廃棄物収集運搬業者が搬入する場合(市長が別に定める右業者が搬入する場合を除く。)」には、単位「一〇キログラム」までごとに手数料「二九円」。また、同区分で「市長が別に定める一般廃棄物収集運搬業者及び一般廃棄物収集運搬業者以外の者が搬入する場合」には単位「一〇キログラム」までごとに「五八円」。
さらに、本件新規則は、経過措置として附則三項で次のとおり定めている。
附則三項 一般廃棄物処理業者(市長が別に定める同業者を除く)が右施設に一般廃棄物を搬入する場合の手数料を、本件新規則一二条の規定にかかわらず、施行日から平成七年三月三一日までは五円八〇銭、同年四月一日以降は一七円四〇銭とする旨。
(三) 本件新規則の法的性質等
本件新規則一二条は、本件新条例三〇条一項の委任を受けて、手数料の具体的な金額を定めたものである。また、附則三項も、右条例の条項の委任の範囲内で定められたものといえる。
すなわち、大阪市では、条例においては、手数料の上限を定めるにとどめ、具体的な手数料の額の決定は市長に委ねている。同時に、条例は、前記のとおり、「特別の理由」があるときは、市長は手数料を減免することができるとも想定している。
(四) まとめ
これらの点に廃棄物処理法制に関する前に説示したところを総合すると、大阪市では、廃棄物処理に関する手数料の額の決定に際しては、いろいろな観点からのきめ細かい行政上の配慮が必要とされるため、議会が条例のレベルで画一的に定めるよりも、市長が臨機応変に行政上の配慮を行って決定することを許容しているといえる。
すなわち、市長である被控訴人は、条例の定める上限の範囲内で具体的な手数料額を定め、かつ、その減免措置をとるにつき、議会から広範な裁量権を授与されたものと認めることができる。
そうすると、本件新規則一二条(市長の定める手数料額)、同附則三項(経過措置)及び本件新条例三一条(特別の理由に基づく減免措置)は、それぞれ異なる形態をとってはいるものの、いずれも実質的には、議会の授権に基づく市長の具体的な措置という点では、何ら異ならない性質のものである。とりわけ、本件では、条例、規則の前示変遷からも窺われるように、被控訴人には、従前から、現行のような条例・規則を根拠規定として手数料額を定めるという手法もとり得たといえる。そうであれば、右根拠規定が形式的に変更されたことによって、従前地方自治法二四二条の二第一項一号の規定による差止めの対象とすることが可能であった減免措置が、差止めの対象から除外されるに至ると解するのは不合理である。そして、被控訴人による本件旧条例に基づく従前の手数料減免措置は、地方自治法二四二条の二第一項一号の規定による差止めの対象となるものというべきであるから、現行の本件新規則一二条(市長の定める手数料額)、同附則三項(経過措置)による手数料額の定に関しても、本件新条例三一条(特別の理由に基づく減免措置)による場合と同様に、右差止めの対象となし得るものと解すべきである。
したがって、本件訴えのうち右差止請求部分の却下を求める被控訴人の主張は採用できない。
三 本件新規則による本件手数料の定め等の違法性(争点2)
1 被控訴人の裁量権
(一) 廃棄物処理法は、一条に同法の行政目的として様々な項目を規定し、国民、事業者並びに国及び地方公共団体の責務を規定している。しかし、これらは概括的な内容にとどまっている。
そして、廃棄物処理法、地方自治法の前示諸規定から明らかなように、市町村はその区域内の一般廃棄物の処理を主宰することをその固有事務とし、その責任主体であるといえる。このため、市町村には、その区域内の一般廃棄物処理の基本となる一般廃棄物処理計画を策定する責務があるし、一般廃棄物処理を同計画に基づいて円滑に遂行する責務がある。
ところで、前示のとおり、一般廃棄物の処理には、<1>直営、<2>委託業者によるもの、<3>許可業者によるものの三通りの選択肢がある。
市町村は、一般廃棄物処理計画の策定に関しては、従前の経緯、現状の分析、将来の展望等を踏まえた様々な角度からの検討に基づいて、一般廃棄物の処理を、右三通りのうちのどの方法をどういう割合で取り入れて実施するのかを決定する必要がある。
この場合、一般廃棄物の処理が、本来市町村によって遂行されるべきであると定める廃棄物処理法の趣旨が考慮されなければならない。しかし、一方、すべての処理を市町村の直営により行うことが困難な状況や、過去において許可業者による処理が広く行われてきた経緯などから、政策的な判断のもとに、許可業者による処理を活用することが許されるのはいうまでもない。
許可業者による処理を広く活用する場合には、処理手数料、その中でも本件手数料のような、市町村の廃棄物処理施設に一般廃棄物を搬入する際の手数料の額の定め方が問題となる。
一般廃棄物の処理手数料は、一般廃棄物の処理体割を市町村が整備し、管理運営するために必要なコストをもとに、これに対する負担を、関係者がどのような方法で分担するかを検討することによって決定される。具体的には、一般廃棄物を排出する者が排出時に個別的に負担するのか、市町村が負担する結果納税者の負担になるのか、一般廃棄物を排出するのが家庭であるのか、事業者であるのかによって差異をもうけるべきかなどの諸要因が総合的な角度から検討される。
その場合、当該市町村において、一般廃棄物の経費の負担が、歴史的にどのようになされたきたか、現状はどうであるかが重要であるし、この点を将来どのように改善していくべきかの視点も重要である。
なお、市町村が、ある事項につき改善を要すると判断し、当該改善措置を実行に移そうとした場合には、その円滑な移行を図る手段を採用する必要性があるか否かという点も十分検討されるべきである。
したがって、一般廃棄物の処理手数料に関する定めは、市町村が責任主体として主宰する一般廃棄物の処理事業を、様々な角度から分析・検討して決定されるものであり、市町村にはこの点について一般廃棄物の適正処理という行政目的を達成するための広範な裁量が認められる。
(二) 法が、一般廃棄物の適正処理という行政目的を達成する事務を、市町村の裁量に委ねた趣旨・目的は前示のとおりであるから、市町村の裁量権の範囲は、右行政目的を達成するための政策的配慮をも許す裁量事項であると考える(最判昭和四七・一〇・一二民集二六巻八号一四一〇頁参照)。
もっとも、市町村が、許容された裁量権の範囲を逸脱したり、同裁量が認められた目的を無視し著しく妥当を欠き裁量権の濫用と認められる場合には、その裁量権の行使は違法となるというべきである。
しかし、一般廃棄物に関する事務は、本来市町村の政策的配慮ないし裁量に委ねられているのであるから、裁判所は、これらについて裁量権の逸脱又は濫用による違法があるかどうかを判断するに当って、市町村と同一の立場に立って、市町村の判断内容について検討することは相当でない。裁判所は、市町村の右裁量権の行使の結果が、社会通念上著しく妥当性を欠くか否かの観点からこれを検討し、その結果により裁量権の行使が違法であるか否かの判定をすべきである。
(三) 前示のとおり、本件新条例は、本件手数料に関して、手数料の額の上限を定めるにとどめ、その具体的金額の確定の要件を定めていない。これは、手数料額の定めの要件の充足について、被控訴人が定めるものとして、その最終的決定権を同人に付与したものであると考える。
その趣旨は、前示のとおり、大阪市議会が、大阪市における一般廃棄物の処理行政を適正に運営するためには、条例で手数料の定めをするよりも、市長である被控訴人が、前示の諸事由を総合的に検討して定めるほうが、より合理的であるというところにある。
ところで、大阪市長である被控訴人に授与された手数料の定めに関する権限の行使は、大阪市の有する一般廃棄物の適正処理という行政目的を達成するための右裁量行為を、本件新条例によって授与されたことに基づいている。したがって、被控訴人の右権限の行使も、右裁量行為であるといえる。
すなわち、大阪市の一般廃棄物の適正処理という行政目的を達成するための広範な裁量が、市長である被控訴人に委ねられたことになるが、ごれには右のとおりの合理的な根拠があるものと認めることができる。
もっとも、被控訴人は、条例による委任に基づいて右権限を行使するのであるから、右委任の趣旨からして、被控訴人の裁量権にもその逸脱・濫用があるときは、違法行為となりうる。
しかし、この権限の行使は、大阪市の有する一般廃棄物の適正処理という行政目的達成のための裁量行為を、被控訴人が委任に基づいて行うものである。そうであるから、裁判所は、被控訴人が、本件新条例による手数料額の上限の定めに違反する場合等の明白な委任の趣旨の逸脱の場合のほかは、被控訴人の裁量権の行使が、社会通念上著しく妥当性を欠く場合、すなわち裁量権の逸脱又は濫用がある場合に限り、違法であると判定すべきである。
(四) 被控訴人は、一般廃棄物の適正処理の遂行という行政目的のもとに、業者収集の公共性、許可業者の零細性等を考慮した結果、これらを根拠として本件旧条例下において同条例に基づく手数料減免措置という行政手法を採用すべきであるという判断をし、本件新条例下において実質的にこれと同様の「本件新規則による減免措置」(その意義につき前掲一六頁参照)をとっている。
控訴人らは、この点につき、被控訴人は業者収集の公共性、許可業者の零細性に関する事実に対する認定及び評価を誤っており、これらの事実の存在を否定することができるとする。そして、被控訴人が本件新規則による減免措置を行うのは社会通念上著しく妥当性を欠くから、裁量権の逸脱又は濫用であり、違法であると主張する。
これに対し、被控訴人は、業者収集の公共性、許可業者の零細性を否定することができないことはもちろん、これを十分認めることができると主張する。
もとより、前示のとおり、裁量権の逸脱または濫用をいうためには、社会通念上著しく妥当性を欠くほどの判断の誤りがあることが必要であるから、本件新規則による減免措置が違法となるか否かの審査に当っては、右措置をとるときの判断の基礎とされた公共性、零細性に関する重要な事実に誤認があること等により、右判断が全く事実の基礎を欠くか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等、妥当性を欠くことが明らかであることが認められなければならない(最判昭五三・一〇・四民集三二巻七号一二二三頁参照)。
そこで、以下において、主として業者収集の公共性、許可業者の零細性に関する事実について検討を加えることにより、公共性、零細性を否定しなければならないほどの事実認定及び評価に関する誤りが存在する旨の控訴人らの主張に対する判断を行う。
2 大阪市における許可業者による廃棄物収集・運搬の歴史的変遷
〔証拠略〕を総合すると次の事実を認めることができる。
(一) 大阪市では、戦後の混乱期に密集地の廃棄物収集・運搬を民間業者が行うということがあり、その後もこれら業者が大阪市の廃棄物収集・運搬の一部を担うという状況があった。これらの業者は、汚物掃除法に基づいて届出をすることにより右事業を行なっていた。
昭和二九年に清掃法が制定され、右民間業者は汚物処理業の許可を被控訴人から受けることが必要となり、右許可を受けた業者が廃棄物収集・運搬を行うようになった。
清掃法は、昭和四五年に廃棄物処理法が制定されるまで施行されたが、清掃法においても、市町村の市街地域内における汚物処理は、市町村の責任において処理すべきものとされていた。
(二) 右のとおり、大阪市における民間業者による廃棄物収集・運搬は、戦後から継続的に行われてきたが、昭和四〇年の半ばくらいから、許可業者による廃棄物収集・運搬の取扱量と、直営の収集量とが半々くらいとなった。
大阪市では、直営では、主に家庭系の一般廃棄物を収集・運搬し、許可業者は、主に事業系の一般廃棄物を収集・運搬している。
しかし、直営でも事業系の一般廃棄物を有料収集・運搬することも行なわれている。一方、許可業者でも、集合住宅などと契約して家庭系の廃棄物収集・運搬を行っている場合もある。
(三) 許可業者は、廃棄物排出者である事業者などから、前示の法令の範囲内で、収集・運搬手数料を契約により徴収している。
一方、許可業者が、大阪市の廃棄物処理施設に廃棄物を持ち込む際の手数料の変遷は次のとおりである。
大阪市では、昭和四一年までは、許可業者の収集・運搬した廃棄物は、埋立処分場に無料で受け入れていた。しかし、埋立処分場の収容能力に限界が来たため、大阪市は、廃棄物処理焼却工場を建築し、徐々に許可業者の収集・運搬した廃棄物も右工場で受け入れるようになり、その過程で、許可業者からも処理手数料(本件手数料)を徴収することになった。
その際、許可業者から徴収する本件手数料に対し、業者収集の公共性、許可業者の零細性などの事由を考慮して、一般の市民等の搬入や、臨時の搬入の場合と比較して減免する措置を行った。
その後の経緯は前示のとおりである。
3 大阪市において許可業者収集の占める割合
(一) 〔証拠略〕を総合すると次のとおり認めることができる。
大阪市の廃棄物収集のうち、直営収集(次の統計においては、大阪市が直営で行なっている一日の排出量一〇キログラム未満の一般廃棄物週二回の無料収集、一日の排出量一〇キログラム未満の一般廃棄物の毎日の有料収集、一日の排出量一〇キログラム以上の一般廃棄物の有料収集を指す)と許可業者による収集のそれぞれの量とその割合は次のとおりである(量の単位は一〇〇〇トン、括孤内はパーセソトの数値)。
直営収集 許可業者収集
昭和四五年 四七六(五〇・六) 四六五(四九・四)
昭和四六年 五一六(四九・〇) 五三六(五一・〇)
昭和四七年 五三二(四九・四) 五四五(五〇・六)
昭和四八年 五一二(四七・二) 五七三(五二・八)
昭和四九年 五〇八(四六・六) 五八二(五三・四)
昭和五〇年 五四二(四五・九) 六三八(五四・一)
昭和五一年 五五〇(四三・六) 七一三(五六・四)
昭和五二年 五五七(四二・四) 七五七(五七・六)
昭和五三年 五六九(四〇・九) 八二一(五九・一)
昭和五四年 五六七(三八・五) 九〇五(六一・五)
昭和五五年 五四九(三七・八) 九〇四(六二・二)
昭和五六年 五五〇(三六・五) 九五七(六三・五)
昭和五七年 五五九(三五・四) 一〇二一(六四・六)
昭和五八年以降の、許可業者収集は、昭和五八年一〇一七から平成三年一三〇六まで毎年増加し、平成四年に一二二七と若干減少している。
直営収集と許可業者収集の比率は、ほぼ昭和五七年の状況が続いている。
(二) 以上によれば、大阪市の廃棄物収集において、許可業者の占める割合は、直営収集が約三五パーセント程度であるのに対して、許可業者収集が約六五パーセント程度であり、許可業者収集の占める割合が極めて高いことが認められる。
4 許可業者の経営状態及び労働環境等について
(一) 〔証拠略〕を総合すると、次のとおり認めることができる。
(1) 大阪市の許可業者は、事業主数で約四〇〇事業主となっている。許可業者は、車両を一台ないし二台保有している者が多く(昭和六一年度七五パーセント)、三台以上保有している者は少ない(同年度二五パーセント)。また、許可業者は右のとおり零細な者が多く占めるが、その中には、取扱量の非常に少ない者もかなり含まれている。許可業者の経営規模は、概して零細である。
(2) 許可業者が、排出事業者から徴収する収集・運搬料金額には、条例による上限が定められている。右上限額は、前示のとおり、直営収集の場合の料金と同一であり、低額に押さえられている。
(3) 許可業者の作業は、排出事業者の意向や交通渋滞を避けるためなどから、深夜早朝作業が常態化している。右作業は、一人又は少人数で廃棄物を曳き出す作業を含み、また深夜早朝の長時間に及ぶ重労働である。このため、作業員を確保することが極めて困難である。大阪市内の一部の区域に全体の半数近くの許可業者が入り組んで収集を行っている。一方、車両一台当たりの収集区域は、保有台数の少ない業者ほど多い。大阪市では、許可業者に対して、収集車両をパッカー車にするよう指導しているが、パッカー車が高価なこともあり、パッカー車化は進んでいない。このように、作業効率の悪い点が顕著にみられる。
(二) 公認会計士島征一郎の調査結果
原判決一二枚目裏一〇行目文頭から一五枚目表五行目文末までを引用する。
(三) 以上によれば、許可業者約四〇〇事業主に関する全体的な傾向として、その経営内容が零細であることは明らかである。また、労働環境も劣悪であり、人手が不足しているほか、作業従事者の心身の負担はかなりのものといえる。さらに、許可業者の経営基盤は不安定であり、人的にも物的にも近代化が進んでいない。
(四) 控訴人らの主張の検討
(1) 控訴人らは、許可業者の零細性は、本来同一の経営主体である者が、作為的に親子、兄弟等で分割して作り上げているにすぎないから、否定されると主張する。
しかしながら、〔証拠略〕によれば、次のとおり認めることができる。
イ 許可業者の中には、親族の関係にある者が、それぞれ別個の事業主として収集業をしている例がみられる。
ロ しかし、これらは、商号に同一又は類似する名称を使用しているだけで、事業実態、収集実態、会計管理は別個に行っている。
そうすると、作為的に分割しているとする控訴人らの右主張は理由がない。
(2) 次に、控訴人らは、許可業者が、排出事業者から料金を徴収する場合に、現実の重量をはるかに超える重量があるものとして算定しているから、許可業者の収入は決して少ないとはいえないと主張する。
しかし、右主張を認めるに足る的確な証拠がない。
控訴人らの右主張は理由がない。
(3) そのほか、控訴人らは、許可業者の自宅、事務所等の調査結果(〔証拠略〕)を挙げるなどして、許可業者の零細性が否定されたと主張する。
しかし、右調査結果をもってしても、許可業者の零細性に関する前判示認定事実を左右するものではない。また、ほかに、右認定事実を左右するに足る的確な証拠がない。
5 本件手数料減免措置の変遷
〔証拠略〕によると、次のとおり認めることができる。
(一) 大阪市では、昭和四〇年ころまでは、許可業者が収集した廃棄物は、埋立処分地に無料で搬入することを認めていたが、前示のとおり昭和四一年から、一キログラムまでごとに一〇銭の手数料を徴収するようになった。
これに対し、許可業者の団体である大阪市清掃連合協同組合から、労働条件が劣悪であること、人件費・設備投資費等に資金が必要であり、経営難の状況であることなどを理由として、右手数料の徴収を撤回することを求める要望書が提出された。
このため、被控訴人は、一〇銭の手数料を七割減額して三銭にするという措置をとった。
(二) その後、大阪市は、昭和四七年に手数料を一円に増額する改定を行った。
これに対し、同じく右協同組合から大阪市議会議長宛に陳情書が提出され、陳情書が大阪市会民生保健委員会で採択された結果、大阪市議会議長から被控訴人宛に善処するようにとの申入れとともに陳情書が送付された。
このため、被控訴人は、市長決裁で減額することにし、本件手数料一円を、焼却工場に搬入する分については九割減額して一〇銭に、埋立処分地に搬入する分については、九割五分減額して五銭にした。
その後、昭和四九年に本件手数料を一円二〇銭に改定し、減額率を九割一分七厘として一〇銭とし、昭和五一年に本件手数料を二円五〇銭に改定し九割減額して二五銭とした。
(三) 昭和五六年の手数料改定時にも、従前同様に業界から減額及び実施時期の延長について申請が出た。
このため、被控訴人は、改定後の手数料三円二〇銭を九割減額して三二銭にした。
6 大阪市における産業廃棄物の受入れ処理について
〔証拠略〕を総合すると、次のとおり認めることができる。
(一) 昭和四五年一二月の廃棄物処理法の制定により、廃棄物は、一般廃棄物と産業廃棄物に区分された。
ところで、大阪市では、廃棄物処理法制定以前から、産業廃棄物が一般廃棄物と同様に業者によって収集されていた。
また、産業廃棄物に関しては、これを専業に取り扱う業者は未だ存在しなかった。
さらに、廃棄物処理法による一般廃棄物、産業廃棄物の区分は、必ずしも排出や収集の実態に合っていなかったため、形式的に一般廃棄物と産業廃棄物を区別して、廃棄物処理を行うことは事実上困難であった。
そこで、大阪市は、産業廃棄物の不法投棄や野焼きの防止等の環境保全上の必要性を考慮して検討した結果、民間の廃棄物処理施設の整備が十分にされていない段階で、形式的に排出事業者の自己責任の原則を貫き産業廃棄物の受入れを拒否するものではなく、適切な範囲で大阪市が産業廃棄物の処理に関与することが必要不可欠であると判断した。
大阪市では、このような観点から、本件旧条例(乙三六)一一条で、廃棄物処理法一〇条二項に基づく産業廃棄物の処理に関する事項を定めた。
すなわち、本件旧条例一一条は、一ないし三項で、大阪市が処理する産業廃棄物は、市長が定めるとするとともに、大阪市が行う産業廃棄物の処理は、一般廃棄物の処理に支障のない場合に限るものとし、産業廃棄物の焼却、圧縮又は埋立処分に関しては、法一三条二項の規定により、一定の金額の範囲内で市長が定める費用を徴収すると定めた。
また、同条は、五項で、一般廃棄物と区分し難い産業廃棄物の処理は、一般廃棄物の例によると定めた。
要するに、大阪市では、<1>一般廃棄物と容易に区分することが可能な産業廃棄物については、一般廃棄物とは別に処理することとするとともに、<2>一般廃棄物と産業廃棄物とが容易に区分し難い状態で排出され、そのまま収集されることが多い形態のものについては、一般廃棄物との混合処理が可能であるため、一般廃棄物の例によるものとした。
そして、大阪市では、本件旧条例の右規定を受けて、昭和五一年二月当時の大阪市環境保健局と許可業者の間において、許可業者が、同時期以前から廃棄物処理施設に搬入していた産業廃棄物のうち、一般廃棄物との混合処理が可能であり、かつ、一般廃棄物と区分し難い状態で排出されるものに限って、許可業者が産業廃棄物処理業の許可を得ることを条件として、従前同様に右施設で受け入れることとする覚書(以下「本件覚書」という。)を交わした。
この際、本件旧条例一一条五項に基づき、一般廃棄物と区分し難い産業廃棄物の廃棄物処理施設への搬入手数料は、一般廃棄物の減額手数料をそのまま適用することとした。
本件覚書における<1>業務の種別、<2>産業廃棄物の種類、<3>収集運搬器材、<4>得意先(排出事業者)、<5>搬入先の詳細は次のとおりである。
<1> 業務の種別
産業廃棄物収集運搬業とする。
<2> 産業廃棄物の種類
紙くず、木くず、繊維くず、廃プラスチック、ゴムくず、動植物性残渣、金属くず、ガラスくず、建設廃材及びこれらを処分するために処理したものであってこれらの産業廃棄物に該当しないものとする(汚泥、鉱さい、ダスト類、廃油、廃酸、廃アルカリ等を除く)。
<3> 収集運搬器材
従来から廃棄物を収集運搬するために使用している車両等を使用できるが、産業廃棄物処理業務の拡大により、収集運搬車両を新たに増加する場合は、産業廃棄物処理業務専用車とする。
<4> 得意先(排出事業者)
本件覚書を交わす時点の得意先とし、新たに得意先と契約するときは事前に届出を要する。
<5> 搬入先
本件覚書を交わす以前から大阪市の廃棄物処理施設に搬入されていたものに限って、同施設に搬入できる。
(二) しかし、大阪市では、その後、事業者による産業廃棄物処理の自己責任の原則からして、大阪市の廃棄物処理施設における処理量をできる限り抑制していく必要があると考え、その施策を実施した。
すなわち、昭和六一年度からは、本件覚書に基づく産業廃棄物のうち、排出量の多い事業所(昭和六一年度は月三〇トン以上、昭和六二年度は月二〇トン以上、昭和六三年度以降は月一〇トン以上排出する事業所)から排出されるものは、「特定廃棄物」として、一般廃棄物とは別枠で北港埋立処分地において受け入れることとした(特定廃棄物の受入量は、昭和六一年度三万八九二九トン、昭和六二年度四万二二六二トン、昭和六三年度四万〇九八三トン、平成元年度四万六二九七トン、平成二年度五万〇六三五トン、平成三年度四万五〇九九トンである)。
そして、受入れの際の手数料も、一キログラムまでごとに、昭和六一年度は九八銭、昭和六二年度は一円九五銭、昭和六三年度以降は二円九三銭とした。
平成四年三月には大阪湾広域臨海環境整備センターが建設した埋立処分地が全面開業したことに伴い、平成四年度以降、特定廃棄物はすべて右センターをはじめとする民間の処理施設において処理されるようになった。
(三) 「建設系廃棄物」とは、建物の建設工事等により排出される廃棄物の通称であり、コンクリートがら等の産業廃棄物と、家具等の一般廃棄物の混合物である。
大阪市では、建設系廃棄物のうち、コンクリートがら等明らかに産業廃棄物として分類できるものは、許可業者により分離して、民間の処理施設に搬入したり、リサイクル業者に売却するよう指導している。
建設系廃棄物のうち、混合処理が可能で一般廃棄物と区分し難い産業廃棄物の処理は、本件旧条例一一条五項に基づき、大阪市の廃棄物処理施設で受け入れていた。
ただし、大阪市は、平成元年度から、右搬入量を抑制するため、許可業者に対し、建設系廃棄物の取扱の有無及び取扱量に関する実態調査を実施し、建設系廃棄物を取り扱う許可業者の数を限定し、取扱量の固定化をはかっている。また、右処理手数料に関しても、特定廃棄物の例に準じて、一般廃棄物の通常の本件手数料の五倍に相当する一キログラム当たり一円九五銭を徴収することにしていた。なお、平成四年九月からは、さらに増額して一キログラム当たり三円二〇銭を徴収することにした。
(四) 本件新条例においても、本件旧条例と同旨の規定を、本件新条例二三条として定めている。
すなわち、本件新条例は次のとおり規定している。
二三条第一項 本市は、法一〇条二項の規定により必要と認める産業廃棄物を処分する。
二項 前項の産業廃棄物(告示産業廃棄物)は、市長が定めて告示する。
三項 告示産業廃棄物の処分は、一般廃棄物の処理に支障のない場合に限る。
四項 一九条及び二〇条の規定は、告示産業廃棄物について準用する。
五項 本市は、告示産業廃棄物のほか一般廃棄物と区分し難い産業廃棄物を一般廃棄物の例により処理することができる。
(五) 以上によれば、大阪市の産業廃棄物の受け入れは、いずれも法的根拠に基づくものであり、違法とはいえない。
たしかに、右受け入れの現状は、本来現行の廃棄物処理法制が予定した望ましい状況と比較すると疑問を差し挟む余地がないわけではない。このため、大阪市も従前から様々な改善措置を行っているし、今後も継続して取り組んでいくことが期待される。
しかし、地方公共団体として、当該地域の環境保全等を達成するという立場から、右受け入れの継続をせざるを得ないという事情もあり、これを直ちに中止することか困難であることも否定できない。
そうすると、大阪市の右受け入れ措置をもって違法ということができないことはもとより、同措置が合理的な根拠を欠く不当なものであるものと断ずることもできない。
7 大阪市域外の廃棄物及び産業廃棄物の流入について
(一) 大阪市政研究所及び大阪市職員労働組合の指摘等について
原判決一九枚目表七行目文頭から二一枚目表五行目文末までを引用する。
ただし、次のとおり補正する。
二〇枚目裏三行目の「後記2(一)」を「原判決第三の三2(一)」と改める。
(二) 統計資料に基づく事実について
原判決二一枚目表七行目文頭から三九枚目裏四行目文末までを引用する。
ただし、次のとおり補正する。
二一枚目表八行目及び二二枚目表二行目から同三行目の「前記二1(一)」を「前示第三の三3」と改める。
(三) 住民による調査について
原判決三九枚目裏六行目文頭から四五枚目裏五行目文末までを引用する。
ただし、四一枚目表一〇行目の「断ずるとは」を「断ずることは」と改める。
(四) 森住推計について
(1) 原判決四五枚目裏七行目文頭から五一枚目裏六行目文末までを引用する。
ただし、次のとおり補正する。
四八枚目裏二行目から同三行目にかけての「前記2(二)(4)(イ)<2>」を「原判決第三の三2(二)(4)(イ)<2>」と改める。
(2)イ 控訴人らは、吹田市における直営収集を推計の基礎としなくてもよいと主張する。しかし、右(1)引用の原判決理由説示のとおり、吹田市では、小規模事業所を中心に事業所の約六割から排出される廃棄物は、直営によって収集されているのであるから、これを除外することには大きな疑問がある。
ロ 控訴人らは、森住推計による複数の手法による推計値が実績値と一致しているのであるから、その信頼性は極めて高いとも主張する。
しかし、右(1)引用の原判決理由説示のとおり、森住推計は、そのいずれの手法にも、軽視することのできない欠陥を有するものである。そうすると、そもそも廃棄物排出量推計の信頼性の面で疑問を差し挟まざるを得ない。そうであれば、たまたま複数の推計値が実績値と近い数値を示したからといって、全部の推計値の信頼性を基礎づけることは困難である。
(五) 大阪市推計について
原判決五一枚目裏八行目文頭から五八枚目表二行目文末までを引用する。
ただし、次のとおり補正する。
五二枚目表一行目の「前記第二の二2(一)(1)オの」を削除する。
(六) 日本リサーチ推計について
原判決五八枚目表四行目文頭から六〇牧目裏七行目文末までを引用する。
ただし、次のとおり補正する。
原判決六〇枚目裏一行目の「また」から同五行目文末までを削除する。
(七) 近代化研究報告書について
(1) 〔証拠略〕によると、近代化研究報告書は、市域外廃棄物量に関しての研究会としての見解として、次のとおり記載している。
「覚書産廃、特定廃棄物、建設系廃棄物の受け入れの是非は別にして、さらに覚書産廃の量は不明であるが、市域外ごみの流入量は、特廃・建廃の量を勘案しても、大阪市環境事業局の説明する量(年間一・八万トンから五万トンの間程度)を上回るのではないかという疑いを、本研究会としては捨て去ることはできない。
マクロな視点で、市域外ごみ量を正確に推計することが困難であることは認めるが、工場建設反対にかかる裁判でも大きな問題となったこともあり、大阪市の廃棄物行政におけるきわめて優先度の高い課題であることからも、まず第一に、市域外ごみ量を正確に推計し、次にその原因を究明し、必要とあらば早急にその是正を図ることが必要である。」
(2) 以上のとおり、研究会は、市域外廃棄物の流入問題が緊急に検討し、改善されるべき案件であることを提言している。
しかし、研究会も、市域外廃棄物量がどの程度流入しているのかについては、これを正確に推計することが困難であることや、そのための資料が十分に備わっていないことを指摘しているのみで、控訴人らが主張するような大量の市域外廃棄物が流入していることを述べているわけではない。
研究会は、市域外廃棄物の流入量が、大阪市環境事業局の説明する量を上回るのではないかという疑いを捨て去ることはできないと述べてはいるが、これは文字どおり推測の域を出るものではない。あくまでも、一つの可能性として指摘したに過ぎない。
したがって、近代化研究報告書によって、市域外の廃棄物の大量流入の事実が裏付けられたとはいえない。
なお、証人高月紘の証言も、概ね近代化研究報告書と同趣旨のものである。したがって、同証人の証言中に市域外廃棄物の流入に関して述べるところがあるが、これのみによって控訴人らの主張が裏付けられたとはいえない。
(八) チェック体制について
(1) 原判決の引用
原判決六二枚目裏三行目文頭から六五枚目表三行目文末までを引用する。
(2) 〔証拠略〕を総合すると、次のとおり認めることができる。
イ 大阪市では、毎年少なくとも二回程度廃棄物処理施設において、抜き打ちで搬入車両の積載物について、市域外廃棄物や搬入禁止物が混入されていないか検査している。
ロ 右混入が判明した場合には、廃棄物処理施設への搬入停止、本件手数料の減免措置の適用除外等の措置をとっている。違反行為を繰り返すものに対しては、制裁措置を加重している。
(九) 中継基地について
(1) 原判決の引用
原判決六五枚目裏五行目文頭から六六枚目裏末行目文末までを引用する。
(2) 弁論の全趣旨によると、次のとおり認めることができる。
イ 大阪市では、平成七年一〇月から特に対策を強化し、中継基地からの廃棄物の搬入は、特に一般廃棄物と産業廃棄物との分別の前処理をする必要性の強い建設系廃棄物に限り認めることにして、中継基地からの搬入量の減量化を進めている。
ロ なお、建設系廃棄物についても、一層の減量化を図るために、搬入票の交付枚数を抑制する施策を検討中である。
(一〇) 搬入票について
原判決六七枚目表二行目文頭から六八枚目裏九行目文末までを引用する。
(一一) 控訴人らの主張に対する検討
(1) 控訴人らの主張
控訴人らは、次のとおり主張する。
大阪市域外の廃棄物及び産業廃棄物の流入量は、年間五〇万トンから六〇万トンに及んでいる。これは、許可業者収集量が前示のとおり年間五〇万トンに及んでいる。これは、許可業者収集量が前示のとおり年間五〇万トンから一三〇万トンであることと比較すると、異常に大きな値である。また、許可業者が大阪市域外の廃棄物や産業廃棄物を、大阪市の廃棄物処理施設に搬入することは禁止されており、これらは違法行為である。
このような違法行為を常習的に行っている許可業者に公共性があるということができないことは明らかである。また、許可業者は、右違法行為により大きな利潤を得ているから、零細性も否定される。
大阪市の右違法行為に対する対応も著しく不当である。
(2) 控訴人らの主張に対する検討
イ たしかに、前示によれば、大阪市において、許可業者が市域外廃棄物を大阪市の廃棄物処理施設に持ち込んでいる違反事例が存在することが認められる。そして、この問題は、大阪市として緊急に是正を図るべき課題である。
また、大阪市において、本件覚書に基づいて受け入れている産業廃棄物が、相当な量に及んでいることが推測され、さらにその中に、許可業者が市域外の産業廃棄物を右施設に持ち込んでいる違反事例が存在することも推測される、
しかしながら、許可業者による市域外廃棄物の流入量が、控訴人らの主張するような異常に大きなものであることを認めるに足る的確な証拠がない。
すなわち、控訴人らは、年間五〇万トンから六〇万トンの廃棄物が、市域外から大阪市内に持ち込まれていると主張し、その根拠として、前示引用の原判決掲記の証拠を挙げているが、これらのいずれについても、必ずしも控訴人らの主張を認めるに十分な内容のものではない。
右違反事例の存在する事実はあるものの、前示のとおり、廃棄物流入量を把握することは困難である。廃棄物流入量が控訴人ら主張の程度のものであることを認めるに足る的確な証拠がない。
もっとも、廃棄物流入量を正確に推計することができなくても、業者収集の公共性を否定するに足りる程度のものであれば、これを問題とすべき余地がないわけではない。しかし、そもそも公共性を否定するに値するほどの廃棄物流入量といっても明らかでないうえ、前示のとおり、本件において廃棄物流入量を把握することは困難というしかないのであるから、このことによって業者収集の公共性を否定することはできないというほかない。
ロ 大阪市が、本件覚書に基づいて受け入れている産業廃棄物及び建設系廃棄物は、前示のとおり、法的な根拠を有するものである。そして、大阪市が廃棄物処理施設で受け入れている廃棄物総量が、全国的にみて大きめの値を示している原因のかなりの部分は、右産業廃棄物等が占めていると推測できないでもない〔証拠略〕。
そして、右産業廃棄物等の受け入れをゆるやかに認める運用をすると、本来、廃棄物処理法等の法令や、これに基づく本件覚書の趣旨に違反する事態を招くことになりかねない。したがって、右運用に際しては、このようなことがないように十分配慮すべきものである。また、本件覚書による措置は、必ずしも右法令により推奨されているものとはいえないのであるから、大阪市としては、本件覚書の是非を含めて、その改善に努めるべきである。
殊に、本件覚書には一応の期限が付され、その後は当事者間で、一般廃棄物と産業廃棄物の分離処理を前提として、改めて協議すると定められているのに、いまだにこの点の協議が尽くされていない点は早期に解決を図るべき事項であるといえる。
しかし、前示のとおり、大阪市では、本件覚書締結の後、できる限り、排出事業者の自己責任の原則を実現すべく、各改善措置を行っており、それなりの成果をもたらしている。また、一般廃棄物と産業廃棄物の分離処理の現実運用にはいろいろの問題点があり、現時点で明確な施策を講ずることには困難な事情が存在する。さらに、環境保全等の行政目的を達成するために、右受け入れを継続する必要性が大きいことも否定できない。
なお、大阪市が、法的な根拠のない産業廃棄物等を受け入れていることを認めるに足る的確な証拠がない。
以上によると、大阪市が産業廃棄物を受け入れていることが違法であるとか、そのため業者収集に公共性がないといえないことは明らかであるし、大阪市の右受け入れ措置が合理的な根拠を欠く不当なものであるともいえない。
ハ もっとも、市域外の廃棄物の流入問題は、もともと許可業者自身によって自主的に改善され、防止されるべき問題である。そうであるにもかかわらず、一部の許可業者による違反事例が跡を絶たない状況が長期間にわたり継続してみられ、この問題が社会的にとりあげられてからも相当の期間が経過していることからすると、許可業者の自主努力による問題の解決はなかなか期待できない。
したがって、大阪市としては、より一層、違反行為に対する制裁措置を強化するとともに、その実効性を挙げるための具体的施策を打ち出す必要があるとも考えられる。
しかし、そうであるからといって、業者収集の公共性が直ちに否定されることにはならない。
むしろ、前示のとおり、許可業者が大阪市の廃棄物処理行政に占める役割の重要性は明らかであって、一部の許可業者の違反事例によって、業者収集の公共性が否定されるべきものではない。
ニ また、大阪市は、前示のとおり、違反事例に対する指導監督を継続してきており、これによってそれなりの成果をもたらしているものと推測される。
もっとも、いまだに違反事例が後を絶たない現状からすると、さらに改善措置を考案したり、導入する必要性があることも否定することができない。
しかし、この種の違反行為を防止するための行政施策の選択や実行には、かなりの困難がともなうことも事実であり、地道に試行錯誤を重ねながら改善を続けていく事態は避けられない。違反事例が後を絶たない現状は是正されるべきではあるが、直ちに違反事例を根絶することは、著しく困難であるものというべきである。
したがって、大阪市が違反行為を防止するための指導監督を今後も一層強化拡充することが期待されるところではある。しかし、大阪市の現時点における指導監督や右問題一般に対する対応に著しく不相当なところがあり、これにより業者収集の公共性が失われているとまではいえない。
8 まとめ
(一) 前示のとおり、本件新条例三〇条一項は、廃棄物処理法六条の二第六項に基づいて、手数料を定めて徴収するための根拠を定めたものである。同条項後段は、手数料の額は、一般廃棄物の特性、その収集、運搬等に要する費用等を勘案して定めなければならないとし、その具体的な手数料額の区分及び算定は、市町村の前示政策的配慮ないし裁量に委ねているといえる。
大阪市の場合、同議会は、本件新条例の制定に際し、大阪市における一般廃棄物の処理行政を適正に運営するためには、条例では一定の区分をしたうえで、各手数料の上限を定め、確定的な手数料額の区分及び決定は、大阪市議会が、条例で手数料の定めをするよりも、市長で、ある被控訴人が、前示の諸事由を総合的に検討して定めるほうが、より合理的であると判断したものと解することができる。
そこで、被控訴人は、前記のとおり、一般廃棄物処理業者以外の者が大阪市の廃棄物処理施設に一般廃棄物を搬入する場合の手数料は、一〇キログラムまでごとに五八円、一般廃棄物処理業者が右施設に一般廃棄物を搬入する場合の手数料は、一〇キログラムまでごとに二九円と定めるとともに、規則施行時から平成一〇年三月三一日までの期間は、一般廃棄物処理業者が右施設に一般廃棄物を搬入する場合の手数料を、当初は五円八〇銭、平成七年四月一日以降は一七円四〇銭とする旨の経過措置を定めたものである。
(二) 被控訴人が本件手数料について右のような定めをした理由は以下のとおりである。
従前、大阪市では、業者収集の公共性、許可業者の零細性、許可業者の経営の安定確保の必要性等の諸般の要因から、許可業者一般に対して本件手数料の減免措置を行ってきた。そこで同市は、廃棄物の処理費用の事業者負担を進めることにより、事業者の廃棄物の排出抑制を促し、廃棄物の減量化を推進する方針を決めた。その目的達成のため、本件手数料の減免措置を廃止して、許可業者に排出事業者から徴収する収集料金を引き上げさせて、処理費用を実質的に排出事業者に転嫁する政策を進めることとした。
しかし、許可業者が直ちに右収集料金を引き上げることは現実問題として困難であり、転嫁することの困難性、許可業者の零細性などからして、その経営を圧迫することになることが危惧された。
そこで、大阪市では、同和衛生組合員に対しては、後記のとおり、別個の措置をとるとともに、右組合員以外の許可業者に対しては、前示のとおりの経過措置として平成四年四月一日から六年間で段階的に廃棄物処理規則所定の額に近づけていく方法をとることにした(証人阿部英和)。
(三) そうすると、被控訴人の本件手数料に対する減免措置は、その形態の変遷はともかく、業者収集の公共性、許可業者の零細性、許可業者の経営の安定確保の必要性などの諸要因を総合考慮したものである。
このことは、同和衛生組合に属する組合員を除く許可業者に対する関係では、本件新規則において本件手数料額の定めを行い、その経過措置を定めている現在においても(すなわち、本件新規則による減免措置)、同様であるものといえる。
したがって、被控訴人の本件新規則による減免措置が、その裁量権を逸脱又は濫用する違法なものであるかは、業者収集の公共性、許可業者の零細性、許可業者の経営安定確保の必要性などの諸要因を総合考慮して、これを根拠として右措置を行なっていることの合理性を検討することによって判断されることになる。
ところで、前示のとおり、被控訴人の本件新規則による減免措置が違法となるのは、被控訴人が、本件新条例による手数料額の上限の定めに違反する場合等の明白な委任の趣旨の逸脱の場合のほかは、被控訴人の右裁量権の行使が、社会通念上著しく妥当性を欠く場合に限られるものと解すべきである。
そこで検討すると、まず、被控訴人の本件新規則による減免措置が、本件新条例による手数料額の定めに違反する等の明白な委任の趣旨の違反があるものとは認められない。
そうすると、本件新規則による減免措置の違法性は、被控訴人が、業者収集の公共性、許可業者の零細性、許可業者の経営安定確保の必要性などの諸要因を総合考慮して、これを根拠として右措置を行なっていることに関して、社会通念上著しく妥当性を欠くところがあるのかを検討することによって判断されることになる。
そこで、次に業者収集の公共性、許可業者の零細性、許可業者の経営安定確保の必要性などについて、その内容をさらに検討することにする。
(1) 業者収集の公共性等
前示認定の事実を考え併せると、次のとおり認められる。
イ 大阪市では、一般廃棄物収集・運搬における許可業者に対する依存度が極めて高い。これは、戦後間もない時期から現在に至るまで顕著にみられるところであり、大阪市における廃棄物処理行政は、業者収集の問題をどう取り扱うかということに還元されるといっても過言ではない状況である。
ロ ところで、一般廃棄物の業者収集は、民間業者が自らの経営責任のもとに行うものでありながら、本来は大阪市が自らの費用負担で行うべき事務を代行しているといった性格が極めて強い。
そして、大阪市では、仮に一般廃棄物の業者収集が、許可業者の廃業等で円滑に機能しなくなるならば、それに取って代わるべき直営収集等の人的・物的設備及び機能を備えているとはいえない状況がある。
ハ したがって、業者収集の公共性は極めて顕著に認められる。
また、許可業者の経営の安定を確保する必要性も極めて高い。
(2) 許可業者の零細性等
前示認定の事実を考え併せると、次のとおり認められる。
イ 許可業者の保有車両台数は、一、二台の比率が高く、三台以上保有している者の比率は小さい。許可業者の経営規模の大半は零細である。
ロ また、業者収集は、作業時間、作業内容等、その執務環境が劣悪であるにもかかわらず、そもそも収集・運搬料金額に条例による上限が定められている(もっとも、上限がもうけられていること自体についてはそれなりの合理性がある)。また、仮に上限が増額されることがあっても、許可業者が排出事業者などから、契約により、十分な料金を徴収することは、排出事業者との関係、許可業者相互の競争関係などから、困難なのが実情である。
ハ したがって、許可業者の経営規模は概して零細であるといえる。
また、許可業者の経営基盤も概して脆弱であるといえる。
(3) 許可業者の労働環境
前示認定の事実を考え併せると、次のとおり認められる。
イ 排出事業者の意向や交通渋滞を避けるためなどから、深夜早朝作業が常態化した重労働である。
ロ このため、作業員を確保することが極めて困難である。
ハ したがって、許可業者の労働環境は概して劣悪であるといえる。
(4) 転嫁の困難性
前示認定の事実を考え併せると、次のとおり認められる。
イ 大阪市では、排出事業者に対して、その廃棄物処理の経費を適正に負担させ、廃棄物の減量化を推進することにした。
このため、大阪市では、本件手数料の減免措置を廃止し、これに伴い許可業者が排出事業者から徴収する収集料金を増額させて、右経費を転嫁することをめざした。
ロ しかし、許可業者に対する本件手数料を直ちに目標値にまで増額し、これに合わせて許可業者が排出事業者から徴収する収集料金を増額することは、現実問題として非常に困難であった。
ハ このため、被控訴人は、経過措置として平成四年四月一日から六年間で段階的に本件新規則の所定金額に向けて増額していく方法をとることにした。
ニ したがって、本件新規則による減免措置における経過措置は、許可業者の経営状況に対する急激な変化を避けるための現実的な対応としてとられたものである。
(四) 以上によれば、被控訴人が、右諸要因を総合考慮した結果、本件新規則による減免措置を行っていることには、一応の合理性があるものと認めることができる。
したがって、被控訴人が、裁量権を行使して本件新規則による減免措置を行ったことが、その裁量権を濫用または逸脱するような、社会通念上著しく妥当性を欠くものということはできない。
(五) なお、控訴人らは、被控訴人が、許可業者に対する本件新規則による減免措置を行うに際し、許可業者から、減免要件を裏付ける資料を徴求していないから、右減免措置には手続自体においても裁量権の逸脱又は濫用による違法がある旨主張する。
しかし〔証拠略〕を総合すると、被控訴人が、本件新規則による減免措置を行うに際して、許可業者から個別的に資料等の提出を求めていないのは、許可業者の廃棄物搬入量や承認車両台数等、被控訴人が業者取集の公共性、零細性を判断するために必要な情報は、毎年行われる許可更新にともなう申請書類、日常的な指導業務により把握しているため、改めて添付資料の提出を求めるまでの必要がないためであることを認めることができる。
また、本件新規則による減免措置の実体は、前示のとおり、被控訴人が、条例に基づいて委ねられた裁量権を、受任の趣旨に基づいて行使しているものである。そして、大阪市の廃棄物処理行政を円滑に運営するために、許可業者収集をどのように取り扱うかという問題や、その際の公共性及び零細性や経営安定確保の要請等の諸般の事由の検討は、必ずしも各許可業者毎の個別的な事情によって結論が導き出されるものではない。むしろ、大局的な見地から行われるべき問題であるともいえるのである。いずれにしても被控訴人が、右のとおりの経緯で把握している情報等の資料により、本件新規則による減免措置を行っていることに、手続的な違法があるものとは認められない。
(六) よって、本件新規則による減免措置が違法であるとはいえない。
四 本件新条例による減免措置の違法性(争点3)
1 本件新条例による減免措置
本件新条例による減免措置(同和衛生組合員に対する減免措置、その意義につき前掲二五、二六頁参照)は、本件新条例三一条が減免の要件として定めている「特別の理由」があるとするものである。
ところで、本件新条例は、「市長は、天災その他特別の理由があると認めるときは」本件手数料を減免することができると定めている。右「特別の理由」とは必ずしも天災に準じたものに限らず、その他の政策的配慮を広く含むもので、その要件を定めるについて裁量を認めたものというべきである。
それは、そもそも、一般廃棄物に関する事務が、大阪市の前示政策的配慮ないし裁量に委ねられており、かつ、大阪市では、議会は、本件手数料に関しては、条例で具体的に定めるよりも、大阪市長である被控訴人が、関係諸要因を総合的に考慮して定めることがより合理的であると判断して、被控訴人の右裁量に委ねたものと解されるからである。
そして、本件新条例三一条による減免とはいうものの、それは本来的には被控訴人が、大阪市議会から委ねられた右裁量権の行使の一つの形態であるといえる。そうであれば、本件新条例三一条については、右のとおり市長に広い裁量権を与えたものと考える。
したがって、本件新条例による減免措置は、本件新条例三一条を根拠とはしているものの、後示のような減免の割合等をも併せ考えると、大阪市議会が被控訴人に裁量権を委ねた趣旨に反するとまではいえないのであるから、以下のとおり違法はない。
そして、その理由は、次のとおりであって、本件新条例による減免措置の違法性は、被控訴人が大阪市議会から委ねられた右裁量権を行使するにつき、以上のとおりその逸脱又は濫用があったか否か、即ちその判断に社会通念上著しく妥当性を欠くところがあるかどうかによって判断されることになる。
2 同和衛生組合員に対する本件手数料の変遷
〔証拠略〕によると、次のとおり認めることができる。
(一) 被控訴人は、許可業者のうち同和衛生組合員については、昭和四七年四月一日に本件手数料を一キログラムまでごとに一円と改定するに際し九割二分減額して八銭とした。
その後、前示のとおり本件手数料は、昭和四九年に一キログラムまでごとに一円二〇銭に改定されたが、右組合員に対しては、減額率を九割三分三厘として、八銭に据え置かれた。
(二) 被控訴人は、本件手数料を、昭和五一年に一キログラムまでごとに二円五〇銭に改定したが、右組合員に対しては、九割三分二厘減額して一七銭とし、昭和五六年に一キログラムまでごとに三円二〇銭に改定したが、右組合員に対しては、九割三分一厘減額して二二銭とした。
(三) その後、被控訴人は、本件手数料を一キログラムまでごとに三円九〇銭に改定したが、右組合員に対しては、減額して二九銭とした。
さらに、平成四年四月一日の規則改正がされ、「一〇キログラムまでごとに二九円」(一キログラムまでごとに二円九〇銭)と定められ、経過措置により、同日から平成一〇年三月三一日までの期間については、うち平成四年四月一日から同年八月三一日までは「一〇キログラムまでごとに三円九〇銭」、同年九月一日から平成七年三月三一日までは「一〇キログラムまでごとに五円八〇銭」、同年四月一日から平成一〇年三月三一日までは「一〇キログラムまでごとに一七円四〇銭」とするものと定められたが、右組合員については、被控訴人により、他の許可業者より一〇キログラムまでごとに一円(一キログラムまでごとに一〇銭)分を減額する旨の減免措置がされている。
したがって、同和衛生組合員については、平成四年四月一日から同年八月三一日までは「一〇キログラムまでごとに二円九〇銭」、同年九月一日から平成七年三月三一日までは「一〇キログラムまでごとに四円八〇銭」平成七年四月一日以降は、「一〇キログラムまでごとに一六円四〇銭」と定められている。
3 本件新条例による減免措置に対する検討
(一) 〔証拠略〕を総合すると、次のとおり認めることができる。
(1) 大阪市の許可業者合計約四〇〇事業主のうち、同和衛生組合員は約一六〇事業主であり、約四〇パーセントを占めている。
大阪市では、許可業者は、市内の一般廃棄物の総排出量の約六〇パーセントの収集運搬を行っている。
このなかで、同和衛生組合員は、許可業者全体の収集運搬量の約三〇パーセントの割合を占めている。
(2) 平成六年四月一日現在の許可業者の承認車両保有状況は、別表一のとおりである。
別表一にあるように、同和衛生組合員については、承認車両の保有台数が一台の零細事業主がその半数を超えている。そして、承認車両の保有台数が二台の零細事業主を合わせると全体の約八割近くを占めている状況にある。
また、一事業主当たりの平均車両台数についても、同和衛生組合員以外の許可業者が三・〇八台であるのに対し、同和衛生組合員は一・九九台と低い値を示している。
(二) 以上によれば、同和衛生組合員の零細性は、許可業者一般の零細性に比較しても、より一層顕著なものであるといえる。
また、大阪市の廃棄物処理行政において、同和衛生組合員の事業活動の占める役割は大きい。
したがって、同和衛生組合員の経営を安定化し、その事業運営に支障が生ずることのないようにすることは、極めて重要である。
ところで、前示のとおり、同和衛生組合員に対しては、本件手数料の徴収を開始した昭和四一年以来、長期間にわたり、同和衛生組合員以外の許可業者との間においても(同許可業者自体も前示のとおり減免措置を受けているが、さらにそれに加えて)、一定の金額を減免する措置をとってきた。
これは、零細性、経営の安定化その他の政策的諸要因を総合考慮すると、同和衛生組合員については、許可業者のなかでも、本件手数料に対するより一層の減免措置を受けさせる必要性が高いものと考えられたためである。
そして、被控訴人の右政策的配慮には、右のとおり合理的な根拠があったものと解することができる。
(三) ところで、同和衛生組合員以外の許可業者に関しては、本件手数料の減免措置を抜本的に見直す旨の政策転換がされたことは前示のとおりである。
そして、右政策転換の基本的発想である、排出事業者への廃棄物処理経費の転嫁の実現という行政目的は、同和衛生組合員を含む許可業者による一般廃棄物収集について一様にあてはまるところである。
したがって、同和衛生組合員に対しても、右行政目的を達成するための改善も図るべきであることは、許可業者一般と同様である。
しかし、右のとおり、零細性、経営の安定化その他の政策的諸要因からすると、同和衛生組合員については、許可業者のなかでも、本件手数料に対するより一層の減免措置を受けさせる必要性が高いものであるとの事情は、いまだ存続しているものと解される。
また、許可業者一般と比較した場合に、同和衛生組合員の減免措置は、一〇キロ当たり一円を条例を根拠にさらに減免しているにすぎないのであり、この点からみても、過当に優遇しているとまではいえない。即ち、本件新条例による減免措置は率にすれば五・七パーセントにとどまる(本件新規則による経過措置終了後は三・四パーセントになる)。
したがって、被控訴人が、右のような政策的見地から、同和衛生組合員に対し、許可業者一般に対する以上の本件手数料の減免措置をなお存続させるべきものと判断したことにはそれ相当の合理的な根拠がある。
そして、被控訴人は、本件新条例三一条に基づいて、同和衛生組合員に対し、本件手数料を減免する措置(本件新条例による減免措置)を行うことにしたものである。
(四) そうすると、被控訴人の右判断、本件新条例による減免措置は、被控訴人の有する裁量権の行使として合理的根拠を有するものであるといえる。
したがって、被控訴人が、本件新条例による減免措置を行ったことをもって、その裁量権の逸脱または濫用があるものと認めることはできない。
(五) なお、控訴人らは、被控訴人が、同和衛生組合員に対する本件新条例による減免措置を行うに際し、右組合員から、減免要件を裏付ける資料を徴求していないから、右減免措置には手続自体においても裁量権の逸脱又は濫用による違法がある旨主張する。
たしかに、本件新条例三一条は、無資力等の個別的な減免事由を廃棄物排出者に明らかにさせたうえで、減免措置を行うことを予定して規定されている。したがって、通常の場合には、減免事由を裏付ける資料を右排出者が提出することが必要とされる。
しかし、〔証拠略〕を総合すると、被控訴人が、本件新条例による減免措置を行うに際して、資料等の提出を求めていないのは、同和衛生組合員の廃棄物搬入量や承認車両台数等、被控訴人が右組合員の零細性等を判断するために必要な情報は、毎年行われる許可更新にともなう申請書類、日常的な指導業務により把握しているため、改めて添付資料等の提出を求めるまでの必要がないためであることを認めることができる。
また、本件新条例による減免措置の実体は、前示のとおり、被控訴人が、大阪市議会の議決に基づいて委ねられた裁量権を行使しているものである。そして、大阪市の廃棄物処理行政を円滑に運営するために、許可業者収集をどのように取り扱うか、許可業者の中で同和衛生組合員をどのように取り扱うかという問題や、その際の公共性及び零細性や経営安定確保の要請等の諸般の事由の検討は、必ずしも各許可業者毎の個別的な事情によって結論が導き出されるものではない。むしろ、大局的な見地から行われるべき問題であるともいえるのであって、いずれにしても被控訴人が、右のとおりの経緯で把握している情報等の資料により、本件新条例による減免措置を行っていることに、手続的な違法があるものとは認められない。
(六) よって、本件新条例による減免措置が違法であるとはいえない。
五 結論
以上のとおりであって、控訴人らの請求は理由がないから、これを棄却すべきである。
よって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 吉川義春 裁判官 小田耕治 杉江佳治)